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はじめに
① 遺言が必要なのは、どのような場合でしょうか。
② 相続人にとってありがたい遺言書の書き方とはいかなるものでしょうか。
③ 被相続人の療養看護をした相続人は優遇されるのでしょうか。
以下、一般に疑問に思われる点について、ご説明いたします。
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まず、相続人が誰になるか。
配偶者がいれば、配偶者は必ず相続人になります。
次に子ども。子どもも必ず相続人になります。例えば、離婚をして、相手方が親権者となったとしても親子の縁が切れるわけではありませんので、相続します。
ですから、配偶者と子どもがいる場合には、配偶者と子どもが相続人になります。
その割合は1:1です。
子どもがいない場合、親や祖父母が相続します。配偶者がいれば、配偶者との相続比率は2:1です。
親や祖父母も死んでいる場合、その場合は兄弟姉妹が相続します。配偶者がいれば、配偶者との割合は3:1です。
また、兄弟姉妹が亡くなっている場合には、おい、めいが相続します。
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特別受益・寄与分
では、遺言書がないと必ず、法定相続分通りに相続する権利があるのかというとそうではありません。
例えば、長男、次男、長女がいて、遺産が6000万円あったとします。
しかし、長男は生前に3000万円を受け取っているという場合。その場合、遺産総額は9000万円と考えます。
そして、それを3で割ると1人3000万円ずつになります。しかし、長男は既に3000万円を受け取っているので、具体的な相続分は0。
よって、次男と長女が3000万円ずつを相続するということになる。
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持ち戻しの免除
もっとも、遺言等で、持ち戻し免除の意思表示をしておけば、以前にもらった分を加算する必要がなくなり、生前贈与を受けた相続人はその分、他の相続人より、相続分が多くなります。
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寄与分
また、寄与分というのがあって、例えば、療養看護に努めた相続人は、法定相続分に上乗せが認められることがあります。
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以上が相続のごくごく簡単な基礎ですが、これを踏まえて、どういう人が遺言書を作る必要があるか。
① 法定相続分通りに相続させたくない人
これは、必須。法定相続分通りに相続させたくないので、生前贈与をしたって、それは持ち戻しをする必要がある。しかし、全財産を生前贈与すれば、別。
② 離婚、再婚をした人など。
③ 気がかりな家族がいる場合
④ 事業やアパートの経営をスムーズに引き継ぎたい人
⑤ 葬儀などの希望を叶えたい人
等が上げられよう。
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相続させたくない法定相続人がいる場合
例えば、夫は先に亡くなり、子どもがいない。兄弟姉妹がいるが、兄や弟とは仲が悪く、兄や弟には相続させたくない。
こういった場合、遺言書を作成しなければ、兄や弟にも当然相続されます。しかし、遺言書を作成することで、仲がよい姉や妹だけに相続させることができます。
もっとも、兄弟姉妹以外の相続人には、基本的に2分の1の遺留分というものがあり、それを侵害する遺言に対しては、
その遺言の存在を知ってから、1年以内に遺留分減殺請求をする必要があります。
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子どもと同居している場合
複数の子どもの内、1人と同居している場合には、揉める場合が多いです。
なぜなら、同居している子ども(長男夫婦の場合が多い)たちは、我慢して親と同居してきたし、親の世話をしてきたんだから、
他の兄弟より多くの相続をしないといけないと思うものであるし、親の方としても子どもと同居するにあたって、うちの家のものは全部お前のものだからなどと言っている場合が多いからです。
しかし、生前に財産を贈与したのでは、子どもに軽く扱われるのではないかという心配が親の方にあるために、生前贈与はなされない場合が多いのです。
他方、親と同居していない子どもたちからすれば、親と同居している間にいろいろ経済的利益を得ているのではないかなどという疑心暗鬼があり、
親と同居している兄弟の相続分が多くなることを納得しない傾向があります。
よって、こういうときに、兄弟の仲が少しでも悪いと非常に揉めることになります。
よって、親としては、その当たりを遺言ではっきりとさせておく必要があると言えます。
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子どものいない夫婦
子どもがいない人は、兄弟や甥・姪がいれば、兄弟や甥・姪に相続されます。
しかし、複数の兄弟や甥・姪のうちの1人に特別にお世話になっている場合があります。
その場合、遺言書が無ければ、寄与分というものが認められない限り、すべての兄弟姉妹(又は甥・姪)に平等に相続されます。
よって、お世話になった方に多くの相続をしてもらいたい場合には、遺言書を作っておいた方がよいと言えます。